メルトダウン
昨日5月23日、東電は、福島原発1号機は津波被害から16時間で、核燃料のメルトダウンが発生したらしいことを発表した。発表が遅れたのは、炉心冷却に専念していたため、解析が遅くなったとのこと。
メルトダウンが起きているのではないかというのは、初期の段階から指摘されていたのだが、一部の燃料ではなくほとんどすべての燃料のメルトダウンが起きていたことは想定外であったらしい。
しかし、ちょっと待ってほしい。冷却水の送水が停止すれば、崩壊熱は閉鎖空間である圧力容器内に閉じ込められるので、その発熱量は水を気化させた後は、温度上昇しかないわけであるから、何時間でメルトダウンの条件である2,800度Cになるかは、だれでも計算できるはずである。1気圧では水は80カロリーの熱量で1グラムの水を気化する。圧力容器内は何気圧だったかは知らないが、簡単に計算できる。
崩壊熱にしても、8時間で半減するそうであるが、停止時点でどれだけの崩壊熱が発生しているかなどは、原子力工学の基礎であろう。
故に最初の16時間というのは、ほとんどの熱量が集中したはずであるし、2ヶ月以上経過した現時点でも1時間あたり6〜10トンもの水で冷却水を必要としていることを考えると、当初、冷却水が遮断されれば、水がすべて気化し2,800度になったのは、相当に早い時期だった可能性がある。当時、水位計が正しく作動しないため、燃料が一部水から露出したかも知れないが、その状況が不明だとしていたが、冷却水の供給が絶たれれば、きわめて短時間に水は気化してしまうはずである。水が少しでも残っていると考えることなんてありえないことなのだ。そして、いったん2,800度になってメルトダウンが始まれば、崩壊熱はすべて燃料の融解熱量として消費されるため、きわめて早い段階で全メルトダウンに発展する。
この融解熱も、燃料被覆管のジルコニウムの融解熱量も解っているので、何カロリーで全融解するかも簡単に計算できる。すると冷却水が停止後何時間後に全融解すなわちメルトダウン状態になるかは、簡単な計算で何ヶ月も要するような話ではない。
にもかかわらず圧力容器が原型をとどめていたことこそ、奇跡的偶然ととらえるべきではなかろうか。おそらく圧力容器の下部が突き抜けたのであろう。1号機の冷却水停止時間は14時間あまり、2,3号機は6時間あまりだというから、1号機が最も深刻だ。