花粉症の根本原因
花粉症はスギやヒノキの花粉がアレルゲンとなってひきおこすアレルギーだといわれており、昔はほとんど問題となるほどのものではなかったが、昭和
40年代後半(1970年代)から急激に増えて社会問題にまで発展した。かくいう私は昭和49年から突然発症し、病院で診断を受けたが当時は医者にもあまり知られていなかったせいか、風邪薬を処方されただけだった。くしゃみはなづまりが続き普通の風邪のように症状が幾日経過しても少しも変化がないことから、風邪ではないのではないか、とどんなに担当医にうったえてもとりあげてはもらえなかった。また、天気の良い日に公園へ梅の花を見にいったときにはとくに症状がひどかったことから、梅の花粉によるアレルギーではないかと申し出たにもかかわらず、聞き入れてもらえなかった。それほど珍しい病気だったのだ。その後年を追うごとに花粉症は増加し、現代ではこれを知らない人はいないことだろう。
そして、その原因と対策についても、シーズンになると新聞、雑誌、テレビなどで特集まで組んで報道されるため、いまや常識になりつつある。
すなわち、
1970年代になると、戦後植林したスギが成木となり花粉をつけるようになったこと、食生活が欧米化したこと、回虫駆除が進んだこと、衛生環境が劇的に改善されたこと、ジーゼル車の排気ガスが増えたこと等々である。しかし、これらの原因はいずれも次第にすすんだものであり、
1970年代に突然増えた原因とはいいがたい。どのくらい突然増えたかのデータは手元に持ち合わせていなかったが、本日(2月25日)、産経新聞に「70年代生まれの9割に花粉アレルギー体質」という記事が掲載された。これによると、
70年代生まれの人は88%がアレルギー体質であり、それに比べて50、60年代生まれは44%と半分であったという。(斎藤博久・国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部長らの調査結果)このことは、花粉が増えたとか排気ガスの影響とかのアレルギーの原因となる物質が増えたからではなく、アレルギー体質そのものが劇的に増えていることを示している。
新聞記事ではその原因として、日本の衛生環境が70年代に劇的に向上したせいではないかと指摘している。しかし世界的にアレルギー患者の多いニュージーランドでさえ
6割にとどまっており疑問を投げかけている。これらのことから、
1970年代に日本人の体質が劇的に変化するような食生活の変化は何だったのかを考えてみると、どんな原因でも徐々に変化するものばかりであり、劇的になものはない。ただしひとつ「塩」を除いて。「塩」は昭和
45年(1970年)に法律により、海水から塩田による従来の製塩法が禁止されたのだ。それはイオン交換法による工業製塩法を保護するための法律だったのだ。この法律により1970年以降、日本からは海水から作られた自然塩はなくなり、もっぱら工業塩しか摂取できなくなったのだ。当時、それでも昔からの製塩法を守るのだとして、沖縄では住民が棍棒をもって官憲と戦ったが、徹底的に取り締まられたというから、自然塩が少しずつ減少していったのではなく、1970年を境に劇的に変化したことが推測される。1970年以降海水からとれた自然塩を摂取しなくなったことと、1970年から花粉アレルギーが劇的に増加したことと関係なしといいきれるだろうか。
世界中で、工業塩を食用にしているのは日本だけである。どんなに貧しい国であっても、工業塩は薬品であり食用にはなりえないという理由から、食塩としては自然塩を用いている。工業塩と海水からの自然塩とが組成が全く同じならば問題はないのだが、実は自然塩の方は若干の不純物を含んでいる。それに対し、工業塩は純度が極めて高く不純物はほとんど含まれていない。不純物は含まれていないほうが優れているというのは、こと食塩についてだけはあてはまらないようである。
塩が人間の体質に影響があるかどうかは明確にはわかっていないが、少なくとも生理的食塩水ではあ副作用が多いという理由から不純物を加えてリンゲル液がつくられたし、母親の胎内の羊水は海水の組成ときわめて近く、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどが含まれているし、海に棲むアサリの砂出しに工業塩(精製塩)を用いると、一晩で死んでしまうことを思うと、不純物が生体に重要な役割を果たしていることがわかる。
その後その法律は平成
10年頃に廃止になり、現在はさまざまな自然塩が店頭に並ぶようになった。しかし、塩味の基本の味噌・醤油は自家製で作られることはほとんどなく、工場で大量生産で作られる。ということは使用する塩に高価な自然塩が使用されるわけがなく、法律はなくなっても相変わらず不純物のほとんどない工業精製塩が用いられているはずである。これではアレルギー体質が減ることを期待することはできない。最近小児アレルギーが深刻な社会問題になっている。花粉アレルギー程度だったら、命には別状はないが、小児アレルギーの場合、米、麦、ソバ、豚肉、牛肉、鶏肉、牛乳、卵がアレルゲンで食べるものがなく、輸入したカエル肉、アワ、ヒエ、キビなどを食べているという例もあったし、給食でソバを食べて死んだ児童がいた事例も報道されたことがあった。
1970年に生まれた人は現在32歳であるということは、その子供は10歳くらいの子供になっている。すなわちその子らの親は生まれてから一度も海水からの自然塩を摂取したことがないわけであるから、事態はますます深刻化しているにちがいない。その結果1970年代生まれは90%ものアレルギー体質になってしまったのではないだろうか。世界一のアレルギー大国ニュージーランドでさえ60%であることを勘案すると、工業塩を食用にすることを中止しただけで、60%以下に減らすことが期待できるのではにだろうか。アレルギー体質と不純物の因果関係を免疫学的に証明せよなどとやぼなことをいわず、豊かな日本が、世界のどんな貧しい国でも食用とはしない工業塩を食塩とすることを、できるだけ早期に止めるべきだろう。
以上