トランプ関税を考える
自由貿易の旗手であったはずのアメリカが、トランプ大統領の登場によって全く違った展開を迎えている。
自由貿易を謳ったWTOをはじめ、気候変動に対するパリ協定からの脱退、そしてWHOからの脱退など、世界的協定からあいついでの脱退を表明している。
それらはすべて、それまでけん引してきたグローバリズムの価値観からの脱退を意味する。
氏は、大統領選にあたり、ディープステイトとの闘いを標榜していた。
これまでは、世界が同一の価値観で発展をとげてきたが、これからは、自国の利益だけを追求するということだ。Make America Great Again そのものだ。
したがって、海外輸入品には高い関税を課して、自国産を守るのだという。
しかし、安い労働力を求めて海外移転した産業を再び国内に取り戻すには10年以上の歳月がかかるだろうし、その間、国民は関税分上乗せされた高価なものを買わなければならない。
関税の増加によりそれだけ売り上げが落ちると識者は指摘するが、一国のみが関税が増加するならばそうであろうが、単にアメリカの消費者の負担がふえるだけではあるまいか。
また一方、輸出競争力を高めるため、ドル安を狙って公定歩合の引き下げを強くFRB長官に求めているが、応じていない。そのため、日米の金利差は4%以上あるため、未曾有の円安を迎えている。
円安は輸出企業には有利であり、トランプ関税の増分を吸収して余りあると考えるがどうであろうか。1ドルが100円だった頃と比較すると50%関税増に匹敵するはずだ。
しかし、円高は物価高騰にもつながりかねない。物価高対策として、政府は一時金支給とか減税を模索しているようだ。
本来、行き過ぎた円安対策としては、交代歩合の調整によるべきであるが、政府負債がGDPの2.3倍を超える日本では、利率の上昇は、負債の金利支払いの増を生むため、避けなければならない。
経済破綻を懸念されたあのギリシャでさえ、政府債務はGDPの1.7倍ていどであったと記憶している。
政府負債がこんなに大きくても経済破綻しないのは、それだけ日本経済が安定しているからにほかならないが、ものには、限度というものがある。
基軸通貨のドルに対して、4%以上の金利差があっては、バランスのとれた為替レートは望むべくもない。
こうなってしまった原因は、あのアベノミクスしかない。円高是正を目指したアベノミクスは、ゆきすぎてしまったのである。これは、人類が初めて経験した世界であろう。
現状を弥縫策でしのぎ見守るか、少しずつでいいから改善してゆくしかない。
弥縫策であっても、赤字国債の発行で減税をすることだけは避けた方がよい。