現代のジャーナリズムとは
子供の頃、新聞でみる外国のニュースは必ず「ロイター=共同」という表示が見出しについていた記憶がある。要するにロイター通信会社から受けたニュースをそのまま報じているということである。最近はその表示は見かけなくなったが、最近のアメリカ報道を見ていると、ロイター=共同ではなく、CNN=各新聞社という様相が見て取れる。ロイター
ではなく一報道機関の発信ニュースをそのまま受け入れ報道するのは、その発信元がもし偏向していたら、偏向そのまま報道してしまう危険性がある。それがはたしてジャーナリズムであろうか。
今回のアメリカ大統領選についての一連の報道を見ていると、真実は自ずから明らかであるにもかかわらず、選挙に不正があったというのは何の根拠もなく、支持者を扇動
して連邦議事会に乱入させたとして、トランプ前大統領にたいし弾劾裁判をしている。
昔のように、ネットもなく、大手メディアの報道しか情報を得る手段がなかった時代ならともかく、最近は、大統領から一個人まで自由に意見をアップできだれでもそれを受け取ることができる時代では、民衆をだますことはたやすいことであったであろうが、現代ではそうはいかない。誰もが真実を知ってしまっている。
このたびの一連の報道も、真実は、選挙不正があり、議会乱入も反トランプ陣営が仕組んだ、トランプ氏を陥れるための陰謀であったことを、両陣営が十分承知している。
それを、弾劾して責任をとらせようとする勢力と、選挙は正しく行うべきだという勢力との戦いなのだ。どんな不正でも戦いに勝てば良いので、どんな汚い手でも使う
過激派を買収して、警備の警察官を懐柔して議事堂に乱入させ、それを相手陣営の責任に押しつけるなど序の口だ。ただし、それをネットで拡散され、世界中に広まってしまった。
私のような素人でも、バレバレの内容であるにもかかわらず、本気で弾劾裁判を議会で論じている様子は、子供のお遊びの域を出ていない。
本気で騙すなら、ロシアのプーチン政権がチェチェンの犯行を装った集合住宅の爆発事故とか、911テロを装った航空機突っ込み事件などだったら、あまりの衝撃に一般国民は惑わされてしまうだろうが、今回のやり方はまるで子供だまし、だれも騙すことはできないけれど、多数決で押し切ってしまう作戦であろう。多数決は真実を証明することとは本来何の関係もないが、民主主義社会では、多数決が真実に打ち勝つ制度であることを保証している。それを許すのは、一般民衆であり、その一般民衆に情報を提供するのが、ジャーナリズムの使命である。
そのジャーナリズムが、偏向した報道をするメディアの報道をそのまま垂れ流してたとしたら、民主主義は根底から崩れ去る。
現代のように情報化社会にあっては、ネットだけでも真実に迫れる可能性が出てきた。
「ベリングキャット」ご存じだろうか。
その名は、猫に狙われるネズミが、自分たちの安全のために、猫に鈴をつけたらどうだろうと言う物語に由来するという。
わずか数人の組織ながら、ネットで公開されている情報を追究することにより、マレーシア航空機の撃墜事件の真相や、ロシアのナワリヌイ氏のノビチョク殺人未遂事件の真相を暴いた組織である、現代の新しいジャーナリズムの可能性を予感させる。
ロイター=共同の世界に安住し、それに異論を唱える人たちを、カルト、陰謀論論者として切り捨てる、日本のジャーナリズムに未来はない。