MMT
昨今、MMT(現代貨幣理論)なる用語をよく目にするようになった。Modern Monetary Theoryの略である。
きっかけは、2019年1月に、アメリカの史上最年少下院議員として話題のアレクサンドリア.オカシ コルテスMMTへの指示を表明したことだったそうである。
折しも、日本では、10月から消費税率が8%から10%に引き上げられる予定であり、景気悪化を懸念する不安に対し、「財政赤字は心配ない」と主張するMMTをめぐる議論が巻き起こった。
この理論によれば、貨幣というものは、当初、物々交換を便利に行うために、貨幣を金や、銀など、それ自身に価値がある材料が使われていたが、そのうちに、紙幣が誕生した。その紙幣自体には価値がないが、政府が価値を補償してくれている。その価値は、政府が過剰な負債に陥れば、ハイパーインフレが発生するので、財政健全化が必要だというのが、これまでの理論だった。
ところが、この理論では、「国家が貨幣を租税の支払い手段と定めていることで、貨幣の価値が担保されている」ことになっている。
したがって、政府が国民から税を徴収するためには、国民が事前に通貨を保有していなければならない。その通貨は通貨を発行する政府からでしかない。すなわち、政府は、事前に国民になんらかの行動の対価として、国民に貨幣を渡してなければ、徴税はかなわない。
政府支出が先であり、徴税はその結果なのだという。
そこで、政府が無制限に支出を拡大すると、需要は増大し、供給を上回り、インフレを引き起こすことはあるが、それは、戦後間もない頃の様に、需要が供給をはるかに上回ったときであり、ここ20年ほどの様にデフレであることは、需要がむしろ不足しているからだ。
したがって、デフレ脱却のためには、財政赤字を拡大することが、求められているはずなのだ。日銀の物価上昇目標2%というのは、それを達成するまでは、財政赤字を拡大すべきなのだ。
税収を増やして、政府の公共支出に当てるのではなく、公共支出を増やして望ましい社会に変えて行くのが、本来の税制であり、税収はその結果である。徴税は貨幣価値の担保という重要な役を担っている。それは、これまでの主流経済学と180度異なる結論に至っている。
過去の消費税アップの際に経験したように、消費税増税は間違いなく、デフレ圧力になることを考えれば、財政赤字の拡大を削減する意味がないならば、最悪の経済政策ということになる。
しかし、国家が貨幣を租税の支払い手段としているというだけで、ほんとうに貨幣価値が担保されるものだろうか。若干の疑問が残る。