米朝首脳会談結果に思う
今日、米朝首脳会談が実現した。その中では、完全かつ検証可能で不可逆な核廃棄、いわゆるVCIDは盛り込まれなかった。
それなのに、トランプ大統領の、あの上機嫌は、何故だろう。氏は、ツイッターで、最初の1分で判断できると言っていた。その予想通り、彼の本気度合いを判断したのだろう。
その後の記者会見でのやりとりを聞いても、もっぱら、金正恩氏を持ち上げるばかりで、合理的な説明を聞くことはできなかった。
トランプ大統領は、実業で数々の修羅場をくぐり抜けており、Dealの基本は、相手を信頼できるかどうかを、条件ではなく、第六感で判断出来るかどうかであることを、身にしみて理解しているのではないかと思う。そうでなくては、会見での説明ではどうにも理解できない。
大統領は、金正恩氏を「頭がいい」と表現しているところに、それが現れている。相手を尊重している、すなわち言うことを、信用している。
それでは、大統領は、金正恩氏にだまされたのかということになるが、騙したのではなく、おそらく本音であった、だから、大統領はそれを感じ取ったというのが、実態だろう。
それでは、なぜ、金正恩氏は考えを変えたかであるが、一言でいうと、先軍政治の限界を悟ったからであろう。
そもそも、先軍政治とは、金正日氏が打ち出した統治形態で、国の振興、統治を産業発展ではなく、軍事強化に置いた。なぜなら、国内にこれと言った産業もなく、多くの若者を、不満を抑えながら統治するには、軍隊に収容して、管理するしかなかった。そうでなければ、たちまちに不満が爆発し、体制維持どころか、国は混乱を極めることは必至であったはずである。
それら若者を軍隊に入れ管理統治し、それに反する者は、収容所送りにする。それしか、道がなかったことも理解できる。それには、仮想敵国が必要であり、まさか、同じ民族の韓国を敵視するわけにもいかず、絶対あり得ないアメリカを選んだということであろう。それは、本当かどうかは分からないが、自分が統治者だったらと考えると、それしか道はないことがよく分かる。
その先軍政治も、核兵器と大陸間弾道ミサイルまで開発してしまえば、それ以上は、実際にそれを行使するかどうかしか、発展の未来は存在しない。国の方針として先軍政治を標榜して、国民を鼓舞しているうちは良いが、それを行使したら国は滅ぶ。その限界を金正恩氏が察知というか、おそらくブレーンが具申したのだろう。
しかし、それは、リビアの例を見るまでもなく、国を開くと自由な考えが人民に芽生え、理不尽な支配体制は、どんなにアメリカが保証しようが、国内の反政府運動は押さえきれない。それこそが、北朝鮮の本当の危機なのだが、それにチャレンジするためには並外れた勇気を必要とする。
そのあたりを、二人で話し合ったのではないかと、わたしは推測する。