ゆめぞのDIYの変遷

 

 自給自足農園では、食物ばかりでなく農園生活に必要なものはできたら自分で作りたいものだ。 先ず手がけたのが休憩小屋である。これは、埼玉県秩父の、名栗村の檜間伐材で、カヌー製作者がその技術を用いて、手作りバンガローを販売している事を知り、大きさも3m四方と手頃なので、キットを購入して、自分で建てた。

 次に手がけたのが、井戸である。農業には水はどうしても必要なので、近所のお年寄りの知恵とお力をお借りして、二人で掘った。その手法は、足場パイプを二人で合図を掛け合って突き入れる方法で、半日ほどで6mほど達したところで、水脈に達し、吸い出しパイプと手押しポンプを設置して、何とか成功はしたものの、この周辺は鉄分が多く、錆くさい。濾過器で、木炭などを実験してみたが、思ったほど効果がなく、井戸はあきらめた。それに変えて、小屋の屋根に樋を設置して、雨水をタンクに貯める方法を現在は採用している。天からもらい水は最も原始的で最も確かな方法であることをしった。飲むことはできなくても、野菜洗いなど農園生活には、十分である。

 次に手がけたのが、コミュニティールームである。仲間とギター合奏を楽しんだり、カラオケや宴会などできるように、設備を整えた。幸い、レーザーカラオケセットを有していたので、この小屋に移設した。

 実は、この小屋を建造するのが、最大の難関だった。概略の構想は頭にあったが、基礎から屋根まで、すべてが初めての経験で、材料も毎週少しずつ買い足しながら、3ヶ月あまりの期間を経て完成した。最も苦労したことは、一人での施工のため、棟上げなどのとき、片方を誰かに持ち上げてもらうことができないことである。こんな時のために特殊なクランプがあることを知った。そんな道具を使いこなすことは、なかなかの快感であることも知った。そしてできあがったのは、木陰に、障子張りの、こぢんまりとした、たたずまいで、忘れかけていた日本家屋の味を思い出させてくれる。私は信州で障子張りの家屋で育ったが、屋外と屋内の境界が紙一枚というのは、実に微妙なものである。伊勢湾台風のとき、強風で障子が撓んでしまうほどで、一家総出で障子を内側で押さえた記憶がある。

 次に手がけたのが、囲炉裏である。田舎の大きな家ならともかく、囲炉裏を設けるのは屋外しかないが、しかたないから、足場パイプを組み周囲をビニールシートで囲み、簡単な屋根を設置した。囲炉裏を囲み、焚き火を見ながら酒を酌み交わす味は格別である。現代人は焚き火の味を忘れてしまっている。

 次に手がけたのが、ウッドデッキである。大自然の中で、日向ぼっこをしながら、お茶などを夢見て製作したが、大自然の木が生い茂り、日向がほとんどなくなってしまい、現在は、放置してしまっている。

 木工は、小さな物は木箱から始まり、テーブル、イス、小屋といろんな物に取り組んでみたが、結局基本技である組み手の技術をどうしても習得できなかった。東急ハンズで木工用特殊機材を購入してみたが、ピシッと決まらない。しかし、最近の電動工具の機能は誠にすばらしいものがある。

 自給自足農園のための設備は一通り確保できた。次にやってみたいと思っていたのは、燻製作りだ。単なるバーベキューだったら、いつでも可能だが、燻製はひと味違う。できることなら生ハムのような冷燻をやりたいところだが、10度以下の温度で一ヶ月以上維持しながらの燻製は、事実上不可能だ。そこで温燻に取り組んだ。70度〜80度程度で4時間ほど燻ぶすと、かなり大きな肉塊もほどよく仕上がる。手作りの燻製の味は、どんなにお金を払っても、現実の世界ではほとんど味わうことはできない。

 その他、ゆめぞのでは、豆腐、納豆、手前味噌、ドブロク、各種漬け物など手作りにこだわって、自給自足を楽しんでいる。

 食物以外では、鍛冶屋である。包丁やナイフを鍛造で作るのである。特別な炉やふいごは不要だ。地面に木炭を積み上げ、ヘアドライアーで扇げば十分だ。ハンマーで叩いて鍛造整形し、焼き入れする。さらにグラインダーで荒削り、続いて砥石で仕上げるのだが、十数本作っただろうか。ところが、切れ味が今一なのと、錆びやすいということで、最近はやっていない。

 ゆめぞののDIYは、最近はやりたいことは、一通りやり終えたかな、という心境である。その中で手前味噌、ドブロク、燻製、各種漬け物の様に定着したものもあれば、豆腐、ナッットウ、鍛冶屋など消え去ったものも多い。

 そこで、最近取り組み始めたのが、裁縫である。知人から譲り受けたミシンで手始めにぞうきんを縫ってみたが、どうしてもミシン目が安定しない。そこで、インターネットで最も人気が高いという機種を買い求めたところ、非常に安定したミシン目で、極めて満足だ。早速、ぞうきんから始め、ズボンの裾上げ、ジャンパーのファスナーの取り替え、クッションカバー、車のヘッドレストカバー、巾着袋の裏地ありなしなど、楽しんでいる。

 ゆめぞののDIYは木工から始まり、金属細工を経て今や、布細工が主体となっている。最近は手芸店でいろんな素材を物色するのが、最高の楽しみとなっている。