私のゴルフ

 

 26歳でゴルフを始めて、43年間よくも飽きずにゴルフをつづけてきたものだ。どんなスポーツでも10年間も地道に練習を積めばかなりのレベルに到達できるものであるが、どうやらゴルフだけはそうは行かないようだ。その証拠に、25年前に初めてのオフィシャルハンデを23もらったが、今現在も23である。途中、良いスコアのときだけカードを提出して、見かけのハンデの向上を目指した時期もあったが、それでも14止まりだった。自分としてはほとんどうまくなったという実感がないまま、齢70歳を迎えようとしている。

 「ゴルフとは不思議なスポーツである」とは、あの青木 功のことばであるが、まさしくそのとおり、40年以上ほとんど上達していないにもかかわらず、飽きることなく練習を続けている。そう、練習も楽しいのである。練習場でも快心のショットを放ったときの快感たらない。この調子だと明日の競技会は優勝間違いなしだと、勇んで出かけたときに限ってさんざんの結果、ということが一度や二度のことではない。練習場でさえも快心のショットどころか、初心者以下ということもたびたび経験している。

 なぜ、快心のショットは続かないのだろうか。

 それはどうやらスイングで打つのではなく、クラブヘッドでボールをたたいているせいではないか。素振りシングルということばがあるが、アマチュアの場合、ほとんどの人が、素振りが良くても、いざボールを打つと全く別人のようなスイングになってしまう。

 それではボールあってもそれを意識せずに素振りのつもりでスイングしようと思ってもどうしてもこれができない。その結果、何年練習を積もうが何の成果も上がらないということになる。

 こんなことがあった。倅が小学6年生のころ、ゴルフ教えたことがある。最初ブンブン振り回すだけでめったにボールに当たることがなかったが、たまにまぐれで当たると、ものすごい弾道で飛んでいった。それですっかりおもしろくなり練習を重ねる内に、ボールにミートすることばかり、気にするようになって、その結果二度と快心のショットをはなつことはなくなり、いやになりやめてしまった。

 子供は、いやになればやめてしまうが、大人はその理不尽さがかえって魅力で、ますますはまって逃れられなくなるのが、ゴルフではなかろうか。40年以上そんなことを繰り返してきてしまった。そして寄る年波とともにそんなムリな動作がとうとうテニス肘を引き起こしてしまった。特に、アプローチやパターのときのように、手打ち動作の時に、ヒジに痛みが走る。ところが、ドライバーのように振り回すスイングではほとんど痛みを感じない。

 茶碗も持てないほどなのに、ドライバーで振り回すときは痛くない、ということは、それ以外の時に如何に手打ちであったかの証明でもある。言ってみれば、ヒジの痛みが手打ちの程度のバロメータでもあるようだ。

 それではということで、アイアンも素振りでブンと振り回すスイングをするときは痛くないが、いざ、ボールを打とうとすると、とたんにヒジに痛みが走る。何のことはない、小学生の倅と変わらないのであった。40年以上何と無駄な努力をしてきたであろうか。そんな目で練習場の他の人のスイングを観察してみると、ほとんど私のスイングと同じであった。

しかし、プロのスイングを録画して観察してみると、全く違う。ブンとヘッドが走るスイングをしているのである。アマチュアのスイングは言ってみればしゃくり上げるスイングで完全な手打ちスイングである。このスイングでは絶対にバックスピンはかからない。逆にプロは如何にバックスピンを減らすかに苦労している。普通に打てばバックスピンがかかりすぎてしまうのだ。えらい違いである。これは練習量やテクニックの問題ではなく、根本的に違ったスイングなのであろう。

では何故アマチュアのスイングはそうなってしまうのかを考えてみると、クラブヘッドで直角にボールにヒットしようとするからであろう。直角に当たる限り、直後にはインサイドあるいはアウトサイド軌道にならざるを得ない。したがって、スライスかフックにならざるを得ず、まっすぐ飛ぶことは、まぐれというか直角に入らなかった結果、言い換えればミスショットの一種ではなかろうか。そのまぐれを再現しようと40年以上努力を積み重ねてきたことになる。そして、より精度を高めようと究極のしゃくり上げスイングになってしまうことになる。クラブヘッドは本来円軌道を描いているはずで、したがって、ボールに対してはインサイドからインサイドへ向かうその一点でヒットすべきなのだ。

その改善策として、昔から、スイングの途中にたまたまボールがあったと意識してショットしなさいと、指導されることが多いが、いざボールに向かうとそれができない。ボールを意識の外へ出すと、今度はクラブヘッドがボールの位置に正しく戻って来なくなってしまうのだ。正しく戻ってくるためには、グリップ、アドレス、テークバック、バックスイング、正しいトップ、ダウン寸スイングとすべてバランスがとれなくてはならないが、その練習よりまずボールをヒットする練習をしてしまうため、スイング作りは後回しになってしまう。それはプロとて同じなのだが、プロはスイングができてからのボールヒットの練習だから、根本的にアマチュアと異なる。しかし、アマとて先のサントリー女子オープンの韓国の16歳アマ金孝周のスイングは完璧だった。多分小さい頃からボールを打つのではなくひたすらスイング作りに励んできた結果であろう。

あのタイガーウッズでさえ、プロデビューのころは完璧なスイングであったが、現在はボールに合わせたスイングになってしまっている。その結果、圧倒的な強さは過去のものになってしまった。石川 遼も今、瀬戸際にあるように思う。

別にこの私が世界トッププロ以上のスイングを目指しているわけではないが、ゴルフスイングの原理原則に逆行したスイングをしたくないだけである。それが少々スコアを崩したりしても、いっこうにかまわない。原理原則に沿ったスイングが多少とも実現できれば、それは、たとえ練習場であっても、打球感、飛距離、方向性とも、これまで経験しなかった快感を得ることができることがわかった。

少なくとも、アイアンショットは、ボールをヒットした後に最下点を迎えるような、しゃくり上げの逆のスイングは実現したい。練習場ではほとんど見かけないが、、、。

 ドライバーショットもスイングとしては同じなのだが、ヘッドが上がり際でヒットするためにしゃくり上げスイングが通用しやすい。その分、ヒット後の軌道はインサイドやアウトサイドに出やすく、スライスやフックの危険性は増すことになる。それがいやなら円軌道の頂点でヒットするしかない。

結局、円軌道スイングを目指さす以外にない。それはすべてのスイングに共通するが、唯一パターだけが違う。ところが、そのパターでやっているスイングの延長で、アプローチからドライバーショットまでやってしまっているのが、これまでの私のゴルフだったような気がする。そのようなスイングは若い内は何とか通用しても、歳をとると、テニス肘を引き起こすことになる。肘関節を一切使わずブンと振り回すと、肘の痛みは一切なく、今まで経験しなかった打球感が得られることもわかった。結局ボデーターンでスイングせよということだろうが、テニス肘をきっかけにそんなことを再認識させられた今日この頃である。

                   以上