イラク攻撃是か否か

 日本の世論は当然のことながら戦争反対だ。たしかに戦争になれば死ぬのはほとんど一般の人間であり、フセインではない。だからといってフセインは一般人の死者が多く出ることを勘案して、アメリカに譲歩することはない。それが独裁というものだ。

 金正日も、どんなに国民が飢えていようが、お金はすべて軍事にまわし、とりわけ効果が大きい化学兵器、核兵器の開発に余念がない。

 これまでは核兵器は戦争抑止力として機能していたが、それは国家が国際法に照らして意志決定ならびに行動する場合である。

 独裁国家の場合には、すべて独裁者個人の胸先三寸でことが決まる。たとえそれが狂気の沙汰であってもだ。クエート侵攻、クルド人への化学兵器使用の実績を考慮すると、何をしでかすかわかったものではない。したがって、早期にその危険を取り除くことが国際社会の一致した意見である。それを武力によって行うのではなく、査察を継続することによって達成せよとの議論が有る。しかし、査察をどんなに継続してもイラクの自主的申し出がないかぎり、みつけることなどできるはずがない。

 炭素菌やボツリヌス菌はもともとアメリカが、イラン・イラク戦争の折に、イラクに与えたものだから、それを廃棄した証明がないかぎり保有していることは明白なのだ。

 北朝鮮も核兵器はともかく化学兵器は大量に保有しているし、ノドンミサイルは100基以上日本に向けて配備済みである。これでは戦争抑止力どころか、金正日の機嫌を損ねないよう、ひたすら米やお金を送りつづけるしか方法がない。

 現在、北朝鮮に対する経済制裁を検討中とのことだが、そんなことをすれば直ちに、「東京を火の海に」と言いかねないし、ビニール風船で時限装置つきの炭素菌やボツリヌス菌が飛んでくるだろう。そのために、国民を飢えさせてでも、開発してきたのだ。

 太陽政策はこれらのことを助長させるにすぎない。一時的平和は事態をより深刻にするだけだ。ヒトラーに対するイギリスのチェンバレン首相の一時的ゆう和政策は、結局世界大戦を招いたし、戦争反対平和主義は何ら紛争解決の役に立たないことを証明している。

 しかしながら、世界の世論は武力行使反対が趨勢である。湾岸戦争の折はイラクのクエート侵攻に対抗措置として武力使用を国連安保理は認めたが、今回は安保理が割れているため、小泉首相も国際協調という理由を使えず日米同盟を強調するしかない。これに対しても、世論は、いかに日米同盟といえども、単にアメリカに追従するのではなく、同盟国だからこそ日本独自の意見をアメリカにいうべきだという風潮である。たしかにもっともな意見であるが、安保理が割れているのに、安保理の決定のない武力行使はやるべきでないと、たとえ申し入れたとしても、ああそうですか、それではやめておきましょうとなるわけがない。それでも日本独自の外交努力をしようということで、茂木外務副大臣をイラクへ派遣して大量破壊兵器を廃棄するよう申し入れてきたらしい。これだけ国際圧力をかけられてもノラリクラリと逃げ回ってきたイラクが、日本がいうならば何とかしましょうとなるわけがない。世論とは所詮この程度なのだ。社民党の福島幹事長は、いまからでも遅くないから直ちに戦争を止めるよう、アメリカに申し入れるべきだ、それが同盟国日本の義務だと、小泉首相に迫っていた。これこそためにする議論であり、時間の無駄である。

 小泉首相は世論は時には間違うこともあると発言して物議をかもした。確かに、戦争はするな、テロは許すな、紛争は話し合いで解決せよということだろうが、話し合いで解決できなかったから、最終的に武力に頼ざるを得ないということを世論は理解しない。その点で武力行使を排除した日本国憲法はいざというときには欠陥憲法であるとが明らかになるはずだ。いままで平和であったのは、そのいざというときががなかったにすぎないのだ。

 そこに目をつけたのが、中国と北朝鮮だ。いわゆる戦後補償というやつだ。中国との国交回復以来ODAという形で巨額の補償金があ獲られ、北朝鮮はいま国交正常化によって一説には200兆円もの経済援助を目論んでいるという。それを阻害するような動きが少しでも起きないよう、首相の靖国参拝厳禁というように、打ち出の小槌の確保に余念がない。

 北朝鮮もすんでのところで、この小槌を手に入れるところだった。ピョンヤン宣言である。日本の経済援助は国民の食料確保に使われるのではなく、核兵器、ミサイル開発にまず振り向けられるはずだ。核開発凍結など国際的合意の遵守を盛り込んでおきながら、こっそり核開発を継続し、拉致事件を謝罪しながら、わずか5人を明らかにするのみですまそうとするなど、宣言で明記したことなど守る気など毛頭見られない。

 打ち出の小槌をとり逃がした北朝鮮はこれからどんな策にでるかわかったものではない。

 しかし、アメリカの「同盟国日本への武力攻撃はアメリカへの攻撃とみなす」との心強い言葉によりかろうじて安全が支えられている状況である。アメリカがそう言ってくれるのは同盟関係がきちんと機能しているからであって、それが、北のノドンミサイルの脅しに対し、「よく当事国同士で話し合うように」といって逃げられてしまったら、安全確保上巨額の経済援助に応じるしかない。そして金正日体制はますます強化されるということになりかねない。それではアメリカの言いなりになるのかという問いもあろうが、少なくとも金正日の言いなりになる方がましであろう。それがいやならば、早急に憲法を改正して軍事力を強化して、それによる抑止力に期待するしかない。それが日本が自立した責任ある国となる唯一の道なのだ。戦争反対、アメリカのいいなりになるな、ノドンの脅しには話し合いで解決を、拉致事件の前面解決をなど、評論家はそれでよいのだろうが、それでは何の解決にもならない。そして事態は放置しておくとそれだけ悪化して行くことが懸念される。そのために手を打つならば早いほうが良い、というのがアメリカのイラク攻撃の真意なのだろう。テロが起きてからそれと戦うのではなく、起きる前にその芽を摘むということであろう。

 テロの芽とは何かということが問題であるが、独裁者に統治されている国というばかりではいけない。独裁者が国策として秘密裏に化学兵器や核兵器を開発するだけでなく、拉致、麻薬、偽札、テロ支援などを行っているかどうかがポイントであるが、それは問い質したとしても、デッチあげだ、そのようなことはしておりませんと、シラをきるに決まっている。それを調査するのは査察ではなく諜報しかない。今回のイラクだってCIAはしっかり事実をつかんでいるにちがいない。

 ピョンヤン宣言の翌々日にはアメリカから北の核開発継続の情報が日本にもたらされた。日本の外交があ危なっかしくて見ていられなかったのだろう。拉致事件の解明にしても、北からの申し出だけに頼るのではなく、諜報が機能していたら、ほとんどの事実を事前に把握できたことだろう。その事実をつかんだ上で外交を行うべきだろう。少なくともアメリカはそうしている。社民党のように、北は拉致はデッチあげと言っているから、そうなのだろう、そんなこといくらなんでもするわけがないという前提で友好を結んで何になるのだろう。横田めぐみさんほか何人かの情報は北から韓国へ亡命した元工作員の証言としてテレビで放映される時代である。本気で諜報活動をやれば拉致被害者の消息をつかむなどいとも簡単なことだろう。

 独自の諜報により真の情報も持たずに、戦争反対などと言っても、取り合ってもらえない。評論家では21世紀の世界に生き残って行くことができない。