この世の終わり

 

 「聖書の暗号」という本を読んだ。旧約聖書の最初の5巻のなかに、本来の聖書の内容のほかに、未来を予言する暗号がかくされているというものである。

 その方法は、ヘブライ語で書かれた旧約聖書を区切りを省いて、3004805字の文字列に並び替えて、ある文字間隔で意味ある単語を検索するという方法で1文字、2文字、3文字から数千文字間隔まで順次検索していくと、歴史的な事実が明確に浮かび上がってくるという。

 ケネディ大統領の暗殺と暗殺者オズワルド、ラビン首相の暗殺、暗殺者アミル、 湾岸戦争、ソ連製のスカッドミサイルの発射とその年月日、真珠湾攻撃とルーズベルト、広島と原爆、人類の月面着陸などから木星と彗星の衝突という宇宙の出来事までが、紀元前三千年もの昔に書かれた聖書に暗号として書かれているというのである。

 これを初めてコンピュータを用いて分析して、数学の論文として発表したのはイスラエルの天才的な数学者として名高い、群論の権威、エリヤフ・リップスである。この論文は、ハーバード大学、イエール大学、ヘブライ大学の数学者によって論文が正しいことが確認された結果、暗号化された情報が偶然発見される確率は約一千万分の一であるそうである。

 しかしこれに対し反論もあって、アメリカの情報機関で暗号の作成と解読に半生を捧げてきた統計学者でありヘブライ語も話すことができたハロルド・ガンズが「ばかばかしい冗談」を証明するために、独自のプログラムをつくり、聖書の時代から現代に至る間での歴史上の32人の賢人の誕生と死亡の年月日、場所を検索したところ、すべて暗号化されていることを確認している。

 聖書以外の膨大な著作にも同様なことがあり得るのではないかということで、「戦争と平和」のヘブライ語訳とほか2つの著作に対して同様な分析を試みたが、何一つ確認できなかった。

 また、旧約聖書のうちでも、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の5巻は旧約聖書のうちでも、トーラーと呼ばれ特に重要とされているが、その5巻のみに暗号は見出され、それ以外の部分には存在しないことが確認されたという。

 この種の話題は必ず過去の出来事の確認であることが多いのが今一つ説得力に欠けるところであるが、この聖書の暗号は、ラビン首相の暗殺を1年前の1994年の9月に、翌年の9月から1年以内に起きることを警告したが、無視された結果、1995年11月4日に発生してしまった。

 その後「聖書の暗号はほんとうか」(久保有政著)という本が出版され読んでみたが、インターネットで旧約聖書のヘブライ語の原文をパソコンに取り入れて自ら確認してみたところ、すべて事実であることが確認できたとのことである。

 そしてこのたび「聖書の暗号2」が発刊されたので読んでみた。

 それによると、2006年、世界戦争、原爆、テロ、ミサイル、終わりの日、ブッシュ、アラファト、シャロン、ビンラディン、パウエルなどの語句が関連付けられて発見されている。

 この本の著者であるジャーナリストのマイクル・ドロズニン氏は危機感をもってそのことをアラファトに伝えたところ、彼はそれを信じたという。そして、ブッシュ大統領とシャロン首相にも伝えるべく現在側近に接触中だという。

 しかし、暗号としてアラファトとともに暗殺という語句が関係していることから、アラファトは暗殺される確立が高い。アラファトがたとえ和平に動いたとしてもイスラム過激派によって暗殺される可能性が高いことを本人は認識しているという。ちょうどイスラエルの元首相ラビンが暗殺されたように。

 ブッシュ大統領は聖書の暗号が指摘するとおり、イラク攻撃を目前に世界戦争に向けてまっしぐらという状況にある。

 もし、ブッシュ大統領が聖書の暗号のことを察知したとしても、テロとの戦いを取り下げる可能性はほとんどないことが予測される。「聖書の暗号」の著者は暗号はひとつの可能性であり、事前にそれを察知すれば発生を未然に防ぐことが可能だと書いているが、それはちがうと思う。起こったことが記録されていた、というのが暗号の本質のはずだ。現在の状況をみても、アラファトの暗殺とブッシュ大統領の対テロ戦争は避けられそうにない。そしてそれは原爆を用いたテロによる報復へとつながってゆくだろう。

 冷戦の終焉により人類の滅亡は避けられたかと思われたが、テロというものが地球滅亡の要因になるほどの大きな力を持つとは思いもよらなかった。

 そうならないようにグローバリズムでは国際法や各種条約・協定によって防止を図ってきたが、最近はテロがもっとも有効であり、軍事大国アメリカに対してさえ通用することが証明された。(一昨年9月11日、同時多発テロ)

 テロの怖いのは、宣戦布告もなければ、核兵器、生物化学兵器の使用禁止など国際的決め事は一切の抑止力にならないことである。 軍事力でテロと戦おうとしても相手が見えないのでは攻撃しようもない。ビン・ラディン一人さえ殺すことができないでいる。

 このことはテロに対し軍事力は無力であることを示している。にもかかわらず、軍事力をもって断固テロと戦うことは、とりもなおさず、人類滅亡につながる。 アメリカは絶対にイラク攻撃をやめないだろう。ということはやはり地球滅亡しかないのだろうか。聖書の暗号によると、それは2006年だという。

 もう、時間が残されていない。