ネオテニー

本日付の産経新聞「正論」欄で、京都大学の元教授で、動物行動学研究家の竹内久美子氏が、ネオトニーについて紹介し、その観点から、日本人の持つ最強の性質について、説いていた。

動物、たとえば犬の場合、耳の垂れたかわいい犬は、穏やかな性質を持つことが分かっているが、本来耳の立った犬も、生まれて間もない時期には、やはり、耳は垂れていて、優しくかわいい性質を有しているとのこと。

確かに、ライオンやヒョウのような凶暴な野獣であっても、生まれたばかりのときは、それはそれはかわいい。

人間も、赤ちゃんの時代には、思わず抱きしめたくなるようなかわいさを誰しも有している。

一方、人間は、チンパンジーとほとんどの遺伝子を共有しているが、チンパンジーは生まれて数年で大人になり、子供を産むが、人間はそれ以上十数年しないと、性的に成熟しない。すなわち大人になれない。しかも、人間の外観は、チンパンジーの赤子のままであり、その十数年の差が、知能や、遊び、手先の技能向上に役立っている。早く大人になってしまうと、自己の子孫を残す活動に、ほとんどの日常は奪われてしまうため、知能や技能が進歩する暇がないという。このように、幼少時の名残を残しながら、大人になることをネオテニーとよばれているのだという。

そして、氏は、東洋人分けても日本人は、子供っぽさが大人になっても抜けず、西洋では子供に間違われて、入場を断られることもよくあるし、また、西洋人がちゃんとしつけた犬を、日本人に託すと、たちまちにダメ犬となってしまうことがあるという。それほどに、かわいがってしまうからだという。日本人はそれほど幼児性が抜けない民族だという。

ところが、最近はその幼児性が世界を席捲している。すなわち、日本製アニメ、漫画は世界中で愛され、今や、KAWAIIは世界共通語になっているほど。

そして、氏は、さらに、ノーベル賞や生産、科学技術の高さも、このネオトニーが顕著である日本人の特性と無関係ではないと言い切っている。

このように幼児性が抜けきらない日本人は、近隣諸国から、どんな脅しがあろうが、憲法9条を守り、武力は放棄すべきだとの意識が強い人が多いのに驚く。

しかし、一方、イシグロ カズオ氏のように幼少時の日本での体験が、ノーベル賞にも相当する高度で、豊かなものであることも証明している。

あの、「星の王子様」の冒頭の“おとなは誰もはじめはこどもだった。しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない”の言葉は、このネオトニーの重要性を表現したものともとれる。それがベストセラーになった所以かもしれない。

そして、それを最も顕著に体現しているのが、日本民族なのかもしれない。

華道、茶道にとどまらず、日本固有の文化を高く評価する傾向は世界に広まっている。やっと、世界もそれを理解できるような精神性が、追いついてきたのかもしれない。

さらにいうなら、女性は男性のネオトニーという説がある。赤ちゃんは男も女もふっくら柔らかなのに、おとなになると、女性だけがふっくら柔らかさを残しているからだという。だから、その女性の持つ精神性はまだまだ活躍する余地がありそうだ。

女性活躍社会とは、どこかで聴いたような気がする。